人工染色体ベクター

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人工染色体ベクター

  鳥取大学医学系押村光雄教授らのグループにより開発された人工染色体ベクターは、ヒトあるいはマウス染色体から細胞内での染色体の維持や分裂に不要な遺伝子領域を削除することにより開発され、それぞれHAC(ヒト染色体由来の人工染色体:human artificial chromosome)ベクターまたはMAC(マウス染色体由来の人工染色体:mouse artificial chromosome)と称しています。

  これらの人工染色体ベクターは染色体としての性質を引き継いでいるため、これまでのプラスミド/ウイルスベクターとは大きく異なる性質を有しています。

 プラスミド/ウイルスベクター等による安定的な遺伝子発現細胞株の構築方法では、目的の外来遺伝子が組込まれたベクターが維持されるには宿主染色体上に挿入されなければならず、その際にベクターはランダムに宿主染色体上に挿入され、かつコピー数も様々であるため、コントロールが困難でした。

<従来法(プラスミド/ウイルスベクター)の問題点>

  1. 導入されるDNAサイズの制限
  2. 外来遺伝子の挿入による宿主遺伝子の破壊
  3. 外来遺伝子の挿入によるがん化等の細胞の性質変化
  4. 挿入部位やコピー数の違いによるクローン間での発現量の差異
  5. 継代培養によるジーンサイレンシング

  人工染色体ベクターは、宿主細胞株内で宿主染色体とは独立して保持されることから、上記の問題を解決することができます。

ヒト人工染色体 HAC ベクター構築方法

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参考文献:Y. Kazuki et al., Gene Therapy (2011) 18 384-393

人工染色体ベクターの特徴

  人工染色体ベクターは、従来のベクターと比較して以下に示すような利点が存在し、安定遺伝子発現細胞株の構築、遺伝子組換え動物の作製やタンパク質高生産細胞の構築など、様々な用途での利用が期待されます。
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